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評価分かれる最終回「アイアムアヒーロー」完結

『アイアムアヒーロー』花沢健吾 (著)


大泉洋主演で映画化もされた本作品ですが、先日最終巻が発売されました。人類がゾンビに襲われるパニックホラー漫画です。
全22巻。2009年の1巻から8年近くかけての完結となりました。

アイアムアヒーロー(1) (ビッグコミックス)
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多少「ネタバレ」しています。ご注意ください。

漫画家を目指す主人公は35歳。大手週刊誌でかつて短期連載を持っていたことはあるものの、現在はアシスタント生活で鳴かず飛ばず、担当編集者にはやんわり転職を勧められる有様です。唯一の特技は狩猟免許を持ち、猟銃を所持していること。

そんな日常生活が、徐々に「ZQN」(ゾキュン)化という現象に浸食されていきます。ウィルスによると思われる人間のZQN(ゾンビ)化。(作中にゾンビという言葉は登場しませんが。)血液を介して感染します。
ZQNになると思考能力は奪われ、致命傷を負っても動き続け、人を襲い噛みつくゾンビと化してしまいます。噛みつかれた方もZQNとなり、また別の人を襲います。

主人公の彼女も感染し、ZQNになってしまいます。

襲われるもののZQNから逃れた主人公は、ZQN化していない仲間を求めて放浪の旅をすることになります。


プライドばかり高く、ハンサムでもなく、中年に差し掛かり、漫画家としての未来も怪しく、独り言のクセがあり、妄想癖があり、品のない下ネタを連発して女性をドン引きさせ、異様なビビリでもある……そんな冴えない平均以下の男性が主人公です。
そんな人物が猟銃所持とか大丈夫なのか? と思いますが、ヘタレなので大丈夫です。この「攻撃性の無さ」は、主人公「英雄」の良い点でもあり、欠点でもあります。

タイトル『アイアムアヒーロー』は、主人公の名前「鈴木英雄」でもあります。

ごくごく平凡な苗字に、ヒーローという意味の名前。このアンバランスさは最後まで付きまといます。主人公自身も、自分が凡百の存在であることを自覚しながらも、どこかで夢を捨てきれません。



最終回に関しては、賛否が分かれています。「打ち切りでは?」という声さえ聞かれます。

主人公のボツネームがいくつか作中に登場します。主人公にまったく存在感が無く、脇役どころか通行人レベルだとか。推理物なのに犯人が途中で完全犯罪をあきらめるとか……。

この作品も同じで、徹底して「敢えて脇役を主役に据えました」という漫画です。脇役ですから、この現象の解明もしませんし、誰かを救うこともありません。

作中には、中田コロリという売れっ子漫画家が登場します。いいところのボンボンで頭もよく性格もよく勇気があり判断力に富み、危機にあたっては冷静にユーモアさえ交えて対処します。性癖には難ありですが、それでいて憎めないキャラです。
つまり主人公より、よほど「主人公らしい」キャラです。

この人が居たから、まだ作品として救われている気さえします(笑)

このような、「普通ならこっちをメインに据えるよなぁ」と思う筋がいくつか登場し、英雄と交わりつつも、結局は「脇」扱いです。どこかに本筋があって、全編「スピンオフ」のような、そんな作品です。

他にも、世界各地の断片的なエピソードが挟み込まれていて、この現象が世界中で起こっていて、あちらの国ではああなった、こちらの国ではこうなった、というのが(なんとなく)把握できます。その一方で、主人公は何も知らずに救けを待っているわけですが……。

よくこれで企画通ったよなぁ」と思いますが。

1巻にこのようなセリフがあります。

「俺はヒーローじゃなくていいんだ。せめて自分の人生ぐらい主役になりたいんだよ。」

そして最終話では、以下のセリフがあります。

「かかってこいよ…俺の人生…」

主人公は、望み通り「自分が主役の自分の人生」を手に入れてはいます。

終わり方が終わり方なので、「これまた別の作品で登場するのでは?」という憶測も飛んでいますが、本編で「さようなら英雄」とデカデカ出ていましたので、さて、どうなりますやら。


ストーリーとしては好みの分かれるところですが、ZQNの気持ち悪さは確かなので、そういうものがお好きな方は手に取っていただくのもいいと思います。

完結記念ということで、いろいろなサイトで、『アイアムアヒーロー』無料試し読みが行われています。

絵柄も「女性にはきついかもしれない」と思わなくもないので、まずはそちらでお試しをお勧めします。

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